「真説 金田一耕助」(横溝正史)

金田一ファン・横溝ファン必携の一冊

「真説 金田一耕助」(横溝正史)
(「横溝正史エッセイコレクション③」)
 柏書房

「真説 金田一耕助」(横溝正史)
 角川文庫

日本の誇る推理小説の探偵として、
乱歩明智小五郎
双璧をなす存在である金田一耕助
本作品は金田一耕助が
実在するものとして
作者・横溝正史が編んだエッセイ集です。
創作の舞台裏や
作品誕生のエピソードなど、
金田一ファン・横溝ファン
必携の一冊なのです。

1976から1977年にかけての1年間、
毎日新聞に毎週一篇ずつ掲載したものを
まとめたものです。
当時横溝は長編作品
「病院坂の首縊りの家」を
足かけ三年越しに完成間近としていて、
次回作として「悪霊島」の
構想を練っていた時期です。
また、映画では「犬神家の一族」
大ヒットし、
続いて「悪魔の手毬唄」「獄門島」
「八つ墓村」と相次いで作品が映画化、
横溝ブームが起きていた頃なのです。

そういえばこの頃、
街の書店の書棚には
角川文庫横溝正史コーナーがあり、
緑色のタイトルの入った
黒い背表紙ががらりと並んでいたことを
思い出します。
金田一耕助ものはすでに
文庫本がほとんど完了し、
戦前の短篇集やジュヴナイルものが
次々と刊行されていました。
当時小学生だった私はその後、
乱歩の少年探偵団から
横溝ジュヴナイル、
そして金田一シリーズへと
没入していくことになりました。

本書の中でも述べられているのですが、
一連の作品の映画化は
この時期が初めてではありません。
「本陣殺人事件(三本指の男)」(1947年)を
筆頭に、1961までに計11本の映画が
作られているのですが、以後、
映画化は途絶えていたのです。
そして1975年の「本陣殺人事件」から
再び映画化ラッシュが始まるのです。
したがって、この時期においては、
新作は「病院坂の首縊りの家」だけで、
あとは二三十年前の作品の
映画化となるのです。
横溝ブーム再来が、いかに突然
わき起こったかわかると思います。

それにしてもこの時期横溝齢75。
毎月連載の「病院坂」を抱えた上で
毎週執筆の本作品を書き上げたのです。
さらにはその後、
大長編「悪霊島」執筆に取りかかります。
何という創作意欲、
何という体力、
何という執念でしょう。

本書出版からすでに40年。
横溝永眠から数えても38年が
経過しています。
旧版角川文庫はすでに廃刊、
新版に取り上げられなかった作品も
多々あり、金田一耕助作品の
全貌に触れるのは
すでに困難になりつつあります。
しかし金田一耕助とその作品の存在感は
いささかも薄らいでなどいません。
ぜひ、本書を読んで
金田一耕助に思いを馳せましょう
(といってももちろん絶版ですが)。

※私は本書を当時
 購入していたのですが、
 紛失していました。
 今回中古でようやく入手しました。
 中古市場でも本書は
 品薄状態が続いています。

(2019.9.29)

〔追記〕
2022年5月24日の
横溝正史生誕120年を記念して
柏書房から
「横溝正史エッセイコレクション」が
刊行されました。
それに伴いアイキャッチ画像を
リニューアルしました。

(2022.5.31)

bluebudgieによるPixabayからの画像

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